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中村元氏への手紙 (94.2.24)


 拝啓。一昨日はご多忙中にもかかわらず、長時間にわたりまして種々懇篤なるご教示を賜りまして誠に有難うございました。心から篤く御礼申し上げます。
 温かい慈愛に満ちたまなざしで、ひとことひとこと語られるお言葉に、無限の指針を拝する思いでございました。
 中村先生は、三国仏教流伝史の正統に棹さす論師のお一人であり、竜樹・世親に比肩する大論師のお立場であらせられると存じております。どうか益々お元気で、更なるご健勝、ご長寿でありますように心からお祈り申し上げます。
 なお、奥様からレコードに関するせっかくのご下問にもかかわらず、的確なご返答ができずに申し訳なく存じます。
 資料の保存につきましては、私共も鋭意研究中でございます。ほかにも若輩で浅学・非才の身を省みず、いろいろと失礼があったかと存じますが、心からお詫びを申し上げます。奥様にもどうぞよろしくお伝えくだされたく存じます。
 時節柄、お風邪など召されませんよう、お体おいといくださいませ。まずは御礼まで申し上げます。敬具。

 平成六年二月二十四日
 中村 元先生

松岡 裕治拝

 追伸。先生の旧選集第八巻に収められております忍性良観に対する日蓮の手紙(「十一通御書」)の真偽につきましては、日蓮の真筆が残存せず、コンピュータによる文体解析の結果から致しましても、やはり疑問のようでございます。


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